「壊れかた指南」読了

筒井康隆「壊れかた指南」読了。

筒井先生の作品はどれも好きで、若い頃のスラップスティックも、
「夢の木坂分岐点」や「旅のラゴス」みたいな長編もたまらないのだが、
本作はそれらとはまた違った感じでとっても好きになった。

一番思ったのは、この本の話はどれも余韻が残ること。
話自体は読んでいる時はちゃんと認識して楽しんでいるのだが、
読後にはその物語よりも、読中で感じた感情や気持ちだけが残るのだ。

これは疑似体験というより実際の自身の体験に近い感じで、
それは例えればコワい夢を見て起きたとたんに
夢の内容はすっかり忘れてしまって恐怖の感情だけが残っている、
そんな感じなのだ。

難しいことは解らないが、詩や散文を純化していって、
最終的に残るものはこうした感情や気持ちであって、
そこでは文章の言い回しや構造などといったものは
むしろその本質にとって「邪魔」になってしまうのかもしれない。

この本の中にも途中で終わってしまう話があるのだが、
そのもやはり読後に感情に残る余韻がかならずあって、
それってまさに現実と同じだなぁと思ってしまった。
(現実とは、途中で唐突に終わるお話の集積かもしれない)

文章や文節、さらに文字の先に何があるのか?
ってなことについて、少し自分なりに新たな地平を感じた次第。