梅田の仕事場に行くのに、いつも阪急電車を使っている。
この電車に乗ったときにいつも思うことなのだが、老いも若きも取りつかれたように
携帯電話に見入ったり、またはあの小さなキーを叩いてメールを打ったりしている
のを見ると、なんともハラがたつのだ。
なんだってイイオトナが
「イマ、ワタシプライベートノメールチェックシテルノ。ジャマシナイデネ!」
「オレノカノジョ、サミシガリヤデメールモスグヘンジシナイトダメデサ!ア、ノゾクナヨォ〜。」
みたいなオーラを出して、公共の空間で自分の世界を主張するのか?そのこと
自体カッコ悪くて胸くそ悪いことだと思わんのだろうか?
8月に入って台風が迫りつつあったある蒸し暑い晩、帰宅の電車でオレサマは
ついにぶち切れた。
阪急京都線特急に乗車した途端、「ケータイ取り憑かれ人間」どもの携帯電話を
取り上げては画面部とキー部分を両手でわしづかみにして
「ボキリ!」 「ベキョ!」 「ブチリ!」 「グキン!」
と、次々にへし折っていった。
「ケータイ取り憑かれ人間」どもは呆気に取られ、オレサマに真っ二つにされた携帯
電話を、物乞いが施しを受けるように両手で恐る恐る受け取った。
50ばかりへし折り終わると、さすがにオレサマの前で携帯電話を手にする輩は消え
うせた。
周囲の脅威の眼差しの中、仕事帰りで疲れたオレサマは空いている席にどっかりと
座りこんだ。そして左手を広げ、手のひらに埋め込んだ液晶ディスプレイを見た。
メールが3件入っていた。
そいつをチェックしようと左手小指の先のメールチェックボタンを右手で押そうと
した時、先程オレサマに自分の携帯電話を真っ二つにされたハタチほどの金髪の
ガキが隣の車両から飛び込んできて、オレサマの左手の親指を除く4本の指を
やおらつかむと、間接が曲がるのとは逆方向に力一杯押しつけた。
オレサマの左手指は「ボギメキキョッ!」と音を立てて左手の甲にくっついていた。
もちろんメールはチェック出来なかった。